2019年1月21日改正発行
今回の改正の趣旨
社会が高度化すると,潜在するリスクは大きくなる。リスクの大きな社会では,これまでのように失敗に学びつつ経営及び現場の管理技術を改善していくという仕組みだけでは,健全な経営が行えなくなってきている。このような経営環境の変化に対応するために,企業運営におけるマネジメント技術としてリスクマネジメントという管理技術が導入され始めた。そして,そのリスクマネジメントの適用範囲が広がり,様々な分野及び業界で,広く用いられるようになってきており,リスクマネジメントは,組織のマネジメントとして不可欠なものとなっている。この社会状況を踏まえ,2009 年にISO 31000 が発行された。そして,ISO 31000 の改訂時期を迎えて,最初は2009 年版の定着を優先するということで限定的な改訂の議論を行ってきたが,議論が進むにつれて2009 年版を活用したユーザーの意見を取り入れた本格改訂を行うこととなり,2018 年に改訂版が発行された。
この改訂では,“ISO/IEC 専門業務用指針 第1 部”の附属書SL によってISO の発行する全てのマネジメントシステム規格にリスク概念の活用が求められ,そのリスクに関しては,ISO 31000 の内容が活用されていることも,前提とした。このISO 31000:2018 を我が国に普及させるため,日本工業規格として改正することを決定し,一般財団法人日本規格協会にリスクマネジメント規格原案作成委員会及び作業分科会(JIS Q 31000 改正委員会)を設置し,“リスクマネジメント-指針”のJIS 原案を作成した。このJIS 原案は,日本工業標準調査会の専門委員会の審議を経て,JIS Q 31000:2019(以下,原則として“本規格”という。)として,平成31 年1月21 日付で公示された。
本規格は,ISO 31000:2018 の構成及び技術的内容を変更することなく作成した日本工業規格である。
出典:JIS Q 31000 解説3
- 講師: 中西 孝治